◆化粧療法で心華やぐ 姫路でNPO法人発足 ◆


「ええ感じやろ?」。プロのメークで笑顔がはじける=姫路市四郷町、むれさき苑デイサービスセンター
 スキンケアやメーキャップなどを通して、ふさぎがちな患者やお年寄りに前向きな気持ちを取り戻してもらう「化粧療法」(メークセラピー)。化粧がもたらす心理的な効果は多数報告されており、医療や福祉の現場でも実践されている。兵庫県内でも、1月に発足した姫路市のNPO法人が、高齢者施設などでの活動を始めた。(黒川裕生)
 NPO法人「美メイク・アクトレス」(同市別所町)。理事長の大地良枝さん(48)は、長年化粧品メーカーで営業インストラクターとして経験を積んだ。2007年にメークとカウンセリングをするサロンを開き、活動の幅を広げようと、NPO法人化した。
 メークには、病気、加齢などによる精神的な落ち込みを防ぎ、華やいだ気分をもたらす効果がある。セラピストとの会話やスキンシップも心身をリラックスさせるという。
 同法人は、趣旨に賛同した同市四郷町の介護施設「むれさき苑デイサービスセンター」で2カ月に1回、利用者にメークをしている。8月初旬の化粧療法には約50人が参加。プロのメークに気をよくしてか、「ちょっとええ男探してくるわ」と軽口をたたく人、「写真撮って」とスタッフにせがむ人など、いつもとは違う華やいだ雰囲気に包まれた。
 大矢みさおさん(94)は、約60年前に夫と死別し、新聞の集金などの仕事で3人の子どもを育て上げた。「仕事と子育てで化粧には縁がない人生だったけど、家でも時々するようになった。知り合いから『最近、おしゃれになったね』と言われると気持ちも若返る」と笑う。
 4年前にくも膜下出血で倒れてから、化粧をしなくなったという女性(74)は「ちゃんとメークしてもらうと浮き浮きする。年を取っても、女は顔やね」と話す。
 同センターを運営する社会福祉法人「尚紫会」事務長の七條朋宏さん(45)は「身体機能が衰えたことで、利用者はどこか気分が沈みがち。それが化粧ひとつでここまで変化が起こるのかと驚いた」と話す。
 大地さんは以前、乳がんと闘病中の知人の求めに応じてメークをしたことがある。抗がん剤の副作用で眉やまつげが抜け、顔色がすぐれないことに悩んでいた知人は、鏡に映ったメーク後の自分に「心がわくわくする」と笑顔になった。「がんそのものを治すことはできなくても、不安な気持ちを和らげることはできたと思う」と振り返る。
 大地さんは夙川学院高校(西宮市)の介護福祉の授業や姫路市内の病院の研修にも出向き、メークの必要性やノウハウを教えている。「メークは自尊心や生きる意欲にも直結する女性の特権。多くの人に重要性を伝えたい」と話している。
 料金はマンツーマン5250円。セミナーや講演の依頼も受け付けている。同法人TEL079・251・2301
神戸新聞 8月18日‎
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